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のっぺらぼう

オバケ度…
70%〜90%
特定状況で「出る」  ? 相手無差別に「出る」  ○
会話は不可  △ 独自の論理   ○
異形の姿   ○

基本は二段攻撃

のっぺらぼうは、ふと顔を上げる。その顔が、ゆでたまごのようにつるりとしている。まず攻撃してくることはない。ただ顔を上げて「あるべきものがない」ということを示すだけだ。それが恐ろしい。化け物がでたことよりも「あるべきものがない」ということが怖いのである。

(「ないはずのものがある」というのも怖いらしい。昔見た映画に、やっとのことで美人と二人きりになった男が、「ないはずのものがある」ことに気づいてショックを受け、ゲエゲエと嘔吐し、立ち直るのにしばらくかかるシーンがあった。よく見れば、美人には喉仏があったし骨格も大きかったので、注意深い観客はネタがばれるまえから気づいていたらしいが、私はすっかりだまされてしまった。とても色っぽい美人だった。映画のタイトルは見ていない人のために書かないでおく。)

当然あるべき顔がない。そんなものを見てしまえば、持っている常識がすべて危うくなる。それは、今あると信じているこの世の存在そのものが危うくなること、つまり、足場が崩れることである。人間は少しだけの奇妙さには好奇心を持って対することができるが、完全に異質なものに対しては、恐怖と拒絶反応でしか対応できない。のっぺらぼうは、かなり高度な怖さのお化けなのだ。





のっぺらぼうの話でもっとも有名なのは、中学校の英語の教科書で紹介されたこともある小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の「怪談」にある、のっぺらの二段攻撃だろう。

夜道で若い女性がうずくまっている。声をかけると顔がない。恐ろしくて「ぎゃー」と逃げ出し、一心不乱に駆け出して、夜泣きそばの屋台で息をつく。今そこでこんなものを見ました、と報告すると、屋台のおやじが顔のない顔を上げ「こんな顔だったかね」。「ぎゃー」

小泉八雲は妻から聞いた民話を元に創作をしていたので、若干の脚色はあっても、この話は彼の完全な創作ではなく、こういう言い伝えがあったのだろうと思う。

ハワイでのっぺら

さてさて、ハワイに「のっぺらぼう」の目撃証言がたくさんある、と言ったら信じてもらえるだろうか。

ワイキキとはダイアモンド・ヘッドを挟んで反対側少々山寄りのカイムキ地区に、ワイアラエというドライブ・イン・シアターがあった。ここの女子トイレで、1950年代終わりごろからたびたび顔のない女性のお化けが出ているのである。お化けはなに食わぬ顔で鏡に向かって長い髪をとかしていたという。

1982年にラジオ番組でこのお化けが取り上げられたときには、たちまち「わたしも見ました」という体験談でラジオ局の電話が鳴りっぱなしになったそうだ。

ハワイは日系の移民が多い場所なので、日本のお化けも一緒に移動していても別段おかしくはないが、面白いことにこのトイレでのっぺらぼうを見ているのは、日系の人ばかりではない。ある目撃証言では、目撃者だけでなく、お化けのほうも人種が違い、なんと顔のない女性は赤毛の白人だったという。体験者たちは「この体験をする前に、類似の話を聞いたことはありません」と声をそろえて言うそうだ。

ハワイには、このほか河童によく似た「グリーン・レディ」と呼ばれる緑色の皮膚に海草のような髪をして甲羅を背負ったお化けの目撃証言もたくさんあり、興味はつきない。

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