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 狛犬 

オバケ度…
20%〜100% 
特定状況で「出る」  ? 相手無差別に「出る」   ? 
会話は不可  ? 独自の論理    ? 
異形の姿    ○ 

これって一体なんなのさ?

狛犬は、神社の入り口付近の台の上に座っている、獅子とも犬ともつかない顔つきをした動物のオバケである。単独でいることはなく、必ず一対である。どこの神社にもいるし、お寺にいることも多いので、日本全国あわせたら、ものすごい数になるだろう。

あるとき、日本を訪問中の外国人に、狛犬を指してこれは何だと尋ねられ、答えに詰まった経験がある。

「いや、こうやって、入口に座っているんだし、けっこう怖い顔だし、まあ、多分、神社を守ってるんだと思うんですが…」

歯切れの悪いことこの上ない。この程度は何の知識がなくても狛犬の姿を見れば分かる。いつものことだが、外国のお客様に自国の伝統文化を説明できない間抜けな日本人、というのをやってしまった。いやはや。ああみっともない。

後日、両親に「狛犬って何?」と聞いてみたが、彼らの答えももたついた。小学校の教科書に

  こまゐぬさん あ

  こまゐぬさん ん

と書いてあったはずという以上の情報が出ないのだ。昭和生まれは、どの世代も、こういう用事をさせると全く不甲斐ない。



「こま」の部分は高麗の意味だから、狛犬は朝鮮半島の犬ということになるが、沖縄のシーサーやシンガポールのマーライオンを挙げるまでもなく、似たような獣の像をアジア各地で見かけるので、特に朝鮮半島が起源とも思えない。外国なら何でも「高麗」だと思われていた時代の名残だろう。最近外国が全部アメリカになってしまっているのと同じ現象だ。

狛犬は犬だが、シーサー(獅子様)やマーライオン(海のライオン)は一応獅子だろうから、狛犬と唐獅子とは起源が同じだと考えてもそれほど無理はない。すると、魔除けの意味を持つ獅子舞と狛犬がつながり、あらためて狛犬はただ座っているのでなく、番犬をしているのだと納得できる。

口を開いたものと閉じたもののセットで「阿吽」だったり、子を連れたものと珠を抱いたもののセットで「雌雄」「陰陽」だったりする。右側が口を開いている「阿」であることが多いが、そうでないものもよく見るので、どちらがどちらと厳しく決まっているわけでもないらしい。

なじみの深い狛犬だが、どうも情報が少ない。一体これはどういうことだろうか。誰も魔除けだと知らない状態でも、狛犬の魔除けの効力はあるんだろうか。あと二十年ばかり経って、もっと人々の興味が薄くなったとき、突然近所の神社やお寺が魔物の大群に占拠されてしまったらどうしよう。

やっぱり伝統文化は積極的に保存するべきなんだろうか。なんだか心配だ。


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