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コンピュータウィルス

オバケ度…
100%
特定状況で「出る」  ○ 相手無差別に「出る」  ○ 
会話は不可  ○ 独自の論理   ○
異形の姿   ○

だんだんタチが悪くなる。

「もし、JOIN THE CREWというタイトルのe-mailを受け取ったら、絶対に開かないでください。もし開いてしまうと、ハードディスクのすべてが消えてしまいます。この文書をできるだけ多くの人に送ってください。これは、新種のウイルスであり、知らない人がたくさんいます。この情報は、IBMから手に入れました。」

これは1998年末に友人から転送されてきた「Join the Crew」というコンピュータウィルスについての警告文だ。IBMから情報が出ていると書いてあるが、実はただのいたずらである。今のところ、こんな名前のウィルスはいない。

文を読んで焦った人たちが周囲に電子メールで転送しまくるので、警告文はまるで「不幸の手紙」のように増殖し続けた。その意味では、この手紙自体が既に、ある種ウィルス的だといえる。最初に見たときは英語だったのに、いつのまにか日本語に翻訳されたところも不気味である。しかし、実害がないので、こいつに関 しては笑っていればよかった。

1999年に話題になったのは、なんといっても新年早々の「Happy99」だろう。これはデマではなく、本物だ。私自身「Happy99」は2度受け取った。うちには被害はなかったが、このあたりか ら、電子メールの添付文書として届き、受け取った人が知らないうちにハードディスクに保存されているアドレスへどんどんメールを出して増える、という形式 のウィルスが増え、一般ユーザーも真剣に心配しなくてはならなくなった。こいつらは、かなりの増殖力を持ち、突然送信されるメールの数が増えるので、ネッ トワークがパンクした。

翌2000年5月の「I LOVE YOU」はもっとすごかった。あれよあれよという間に、色々な人からのラブレターが到着する。みんなそんなに私が好きだったの? みたいな馬鹿げた状況である。「Happy99」と同じタイプの増殖方法だったが、こちらのほうが強力だったようだ。発生がゴールデンウィーク中だったため、日本の被害がそれほ ど大きくなかったのは、つくづく良かった。このとき私が受け取ったウィルスつきメールの大半は、アメリカ発だった。

こうやって増殖しているウィルスだが、だんだん数が増え、感染と繁殖方法が巧妙になり、最近では自宅の機械に「ノートン入ってるから」という程度では全然安心できなくなってきた。まったく迷惑なことである。ウィルス検出ソフトの類は、まず誰か被害者が出て、それからエンジニアが知恵を絞って考えた対策がデー タとして配布されているわけだから、絶対安全ということは考えられない。みんなより先に感染しちゃったら、もうどうしようもないのである。

いやだいやだ。


これは、オバケだ。

コンピュータの中の重用書類や大切なデータを一瞬のうちに食べてしまう。次々と周囲のコンピュータにとりつき、多大な損害をあたえる。正体は不明。姿形も不明。どこから来るかも予想できないし、どう防げばよいかも素人には分かりにくい。コンピュータの中身のことは結局よく理解できないのに、日々の生活はどん どんコンピュータに依存してしまっている。そんな私たち現代人の居心地の悪さや不安がピタリとつかれた格好だ。コンピュータウィルスは、どうにもタチが悪 い。それも、だんだん度を増しているから始末が悪い。

あ、これはオバケにそっく りだ。ためしにオバケ度を計算すると見事に100%である。ただ、リアルタイムで出現しているものなので、少し情報を集めて勉強すれば、理不尽な怖さがなくなって冷静に対応できるようになる。そこがこいつの弱点だ。オバケとしてはまだまだ未熟、オバケ未満、というところか。

聞 いた話だが、ウィルスを受け取ると「めずらしいから」と言ってホクホクとデータを保存している、つまり、ウィルスを蒐集している人がいるという。無論、こういう奇行に出るのはコンピュータの表も裏も知りぬいたパワーユーザであって、凡人の我々がそんな無謀なことをするべきではない。が、愛好家につかまって 標本化されているようでは、やっぱりオバケとしては未熟なのである。今後の成長を見守りたい、いや、これ以上成長してもらっては困るのだが・・・。

類似の化け物じみた社会問題には、「2000年問題」「所沢のほうれんそう」「毒物混入缶ジュース」などが考えられる。「狂牛病」は、気味の悪さはコンピュータウィルスにそっくりだが、実体があるのでオバケとはいえない。昔からいるオバケと違い、これらの社会問題にはユーモラスな面が全然ない。姿がない ので絵も描きにくい。

<蛇足>

コンピュータウィルスについてより詳しく知りたい場合は、ウィルス退治ソフトを作っている会社のまじめなページ等をごらんください。

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