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ひゅードロドロ (つづき)

うすどろも気になる。

うすどろも面白い。足なし現象と同じくらい気になる。

ヒュードロドロという芝居じみた効果音と共に出てくるオバケが他にあるだろうか。そんなのは幽霊だけである。

登場するたびにドロドロドロ…これはまるでおなじみのキャラクターの登場をドラマチックに盛り上がる音楽、たとえばゴジラが登場するとき鳴り響く「ゴジラのテーマ」のようなもの、あるいは落語家が登場するときの出囃子のようだ。

うすどろがテーマ音楽だとすれば、「幽霊」というキャラクターが娯楽メディアの産物であることがそこで証明されているも同然だ。

白装束手ぶらぶらの幽霊は、 庶民の心の中にある漠然とした畏怖をとらえて形にし、印象深くなるようデフォルメを加えたエンターテインメント用のキャラクターなのだ。

歌舞伎脚本作者、鶴屋南北の代表作「東海道四谷怪談」には「この時、うすどろたて、障子へタラタラと血かかる途端に」というト書きがある。うすどろを使って 怖い場面を盛り上げているわけだ。四谷怪談の初演は一八二五年。江戸後期にはもうひゅードロドロがト書きに使われるほど市民権を得ているのだ。やはり江戸 時代あたりの庶民文化に今私たちが考える幽霊のルーツがあるのだろうか。


現代の創作オバケのうちで、幽霊のように生き残って百年、二百年後に人々のオバケのイメージの中核を形成する立場になっているものがあるとすればどれだろう。時代を超えた魅力を持つキャラクターを、現代日本は生み出せているだろうか。ゴジラは二十三世紀になっても愛されているだろうか。

そんなことを考えるのは楽しい。







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